データ分析を勉強したいけど何から始めればいいか分からない人への、遠回りしない順番
getfat
地方の食品メーカーで販促企画をしている森田といいます。
営業を8年やったあと、今の部署に異動しました。
異動して3か月目の役員会で、担当したキャンペーンについて「で、これは効果があったの。数字で説明して」と聞かれました。
手元には売上が伸びたグラフがありました。
それなのに、何ひとつ答えられませんでした。
その日の帰りの電車で「データ分析 勉強 順番」と検索しました。
出てきた答えが、見事にバラバラでした。
まずExcelだという人、SQLからだという人、Pythonを覚えろという人、統計検定を取れという人。
どれも自信満々に書いてあるので、余計に決められなくなりました。
結局その3週間、私は何も始めませんでした。
厚生労働省の「令和7年度 能力開発基本調査」でも、自己啓発を行ううえでの問題点として「どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない」を挙げた正社員は21.6%、「自分の目指すべきキャリアがわからない」は20.0%でした。
5人に1人が同じところで止まっているわけです。
この記事では、私が3年かけて遠回りした末にたどり着いた順番を書きます。
数字が苦手な非エンジニアが、いちばん短い距離で「数字を仕事に使える」ところまで行くための順番です。
目次
遠回りする人は、だいたい「道具」から入っています
私が最初にやったことを白状します。
Pythonのインストールでした。
Anacondaを入れて、パスを通して、仮想環境を作って。
2週間かけて環境構築だけが終わり、肝心の分析には一度もたどり着きませんでした。
おまけに会社のパソコンは勝手にソフトを入れられない設定で、覚えた手順は自宅でしか使えませんでした。
道具から入ると、道具を覚えること自体が目的になります。
そして、道具を覚え終わった頃には、最初に知りたかったことを忘れています。
私が実際に試して、遠回りだったと感じた入り方をまとめておきます。
| ありがちな入り方 | つまずくところ | 実際に必要になる時期 |
|---|---|---|
| いきなりPython・R | 環境構築とエラー解決。分析に着手する前に力尽きる | 数千件を超えるデータを繰り返し処理し始めてから |
| 分厚い統計学の入門書 | 3章目あたりの数式で止まり、二度と開かない | 全体像をつかんだ後、辞書として |
| BIツールから習得 | きれいなグラフは作れるが「で、何が言いたいの」に答えられない | 見せる相手が増えてきてから |
| 統計検定の合格を最初の目標にする | 試験範囲の消化が目的になり、自社の数字を一度も見ない | 現在地を確認したくなったとき |
念のため書いておくと、Pythonも検定も価値がないという話ではありません。
順番として後ろだ、というだけです。
学ぶ順番は、実は国がすでに決めています
自分でゼロから順番を考える必要はありませんでした。
公的な教育制度の中に、すでに答えが置いてあったからです。
高校数学は「データの分析」が先で、「統計的な推測」が後
文部科学省の高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説では、数学Ⅰの内容に「データの分析」が置かれ、数学Bの内容に「統計的な推測」が置かれています。
そのうえで、数学Bについては「『数学Ⅰ』を履修した後に,履修させることを原則としている」と明記されています。
平たく言えば、平均・ばらつき・相関といった「手元のデータを整理する話」を先にやって、標本から全体を推し量る「推測の話」は後、ということです。
独学がつらくなるのは、たいていこの順番が逆になったときです。
私も最初、いきなり仮説検定とp値の解説を読んで撃沈しました。
手元の数字を読めない人間が、見えない母集団の話を理解できるはずがありませんでした。
学習指導要領の本文は文部科学省の高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説から誰でも読めます。
大学のモデルカリキュラムは「読む→説明する→扱う」
もうひとつ、社会人にとってさらに実用的な資料があります。
数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムがまとめた数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)モデルカリキュラムです。
今の大学生が全学部共通で学んでいる内容の標準形です。
この中の「データリテラシー」は、次の3段階で組まれています。
- 2-1 データを読む(データを適切に読み解く力を養う)
- 2-2 データを説明する(データを適切に説明する力を養う)
- 2-3 データを扱う(データを扱うための力を養う)
注目してほしいのは、スプレッドシートやBIツールといった道具が出てくるのが最後の「2-3 データを扱う」だということです。
読む、説明する、そのあとに道具です。
私がやったのは、完全にこの逆でした。
学修目標には「データの比較対象を正しく設定し、数字を比べることができる」「不適切に作成されたグラフ/数字に騙されない」といった項目が並びます。
どれも数式ではなく、会議で必要になる力です。
遠回りしない順番は、この4ステップでした
制度の話を、非エンジニアの日常業務に翻訳するとこうなります。
ステップ1 まず全体像を3時間で通す
1冊目に分厚い本を選ばないでください。
最初にやるべきなのは理解ではなく、地図を作ることです。
統計には記述統計と推測統計があって、相関と回帰はここに位置していて、確率はこのあたり。
その程度のざっくりした見取り図が頭にあるだけで、あとから調べたことが迷子にならなくなります。
私はこの段階でマンガ形式の入門書に助けられました。
昨年、同じ著者の行動経済学版を読んで、苦手意識がだいぶ薄れたからです。
同じシリーズの統計学版が2026年8月10日に出ています。
経営学者の中川功一さんが書いた、192ページ・全8章・80テーマの本です。
第2章が記述統計、第6章が推測統計と、先ほどの「先に読む、あとで推測する」という並びがそのまま章立てになっています。
目次と扱っているテーマは決定版 統計学がマンガで3時間でマスターできる本の書籍ページで確認できます。
正直に書いておくと、この手の本を1冊読んでも分析ができるようになるわけではありません。
地図が手に入るだけです。
ただ、地図がないまま歩き回った3週間を思い出すと、その差は決定的でした。
ステップ2 自分の職場の数字で「読む」を練習する
地図ができたら、練習台は自社のデータにしてください。
教材のサンプルデータより、圧倒的に頭に入ります。
理由は単純で、非エンジニアの最大の武器は「その数字がなぜそうなったか知っている」ことだからです。
私は自社の売上明細を1年分もらって、これだけをやりました。
- 平均だけでなく、中央値と最頻値も並べて見る
- ヒストグラムを描いて、分布の形を見る
- 標準偏差を出して、ばらつきの大きい商品を探す
- 極端な数字を見つけたら、原因を営業担当に聞きに行く
これで恥ずかしい勘違いが1つ見つかりました。
以前「平均客単価が上がった」と報告したキャンペーンは、実際には高額商品をまとめ買いした少数のお客様が平均を押し上げていただけで、買ってくれた人の数はむしろ減っていたのです。
平均は、都合の悪い事実をきれいに隠します。
モデルカリキュラムにも「実社会では平均値=最頻値でないことが多い」とわざわざ書いてある理由が、このとき腹に落ちました。
ステップ3 比べ方をそろえる
読めるようになると、次は必ず「で、効果はあったの」を聞かれます。
ここで必要になるのが、相関と因果の区別です。
私が役員に詰められたキャンペーンも、後で調べたら答えは身も蓋もないものでした。
実施した週の平均気温が前年より4度以上高く、扱っていた商品は気温が上がると勝手に売れる商品だったのです。
施策と売上には相関がありましたが、因果があったとは言えませんでした。
比べるときに最低限そろえるのは、この3つです。
- 期間をそろえる(前年同週、直前4週など、季節と曜日の影響を消す)
- 対象をそろえる(実施店と非実施店、対象商品と非対象商品)
- 外から効いた要因を先に挙げる(気温、競合の特売、給料日、天候)
これを1枚のメモにして会議に持っていくようになってから、詰められる回数が明らかに減りました。
分析の腕が上がったからではありません。
「何と比べたのか」を先に言えるようになっただけです。
ステップ4 手を動かす場所は無料で借りる
有料の講座を申し込むのは、ここまで来てからで間に合います。
公的機関が無料で用意している場所が、想像以上に充実しているからです。
私が実際に使ったのは次の2つです。
総務省統計局のなるほど統計学園は、初級で代表値やグラフの作り方を扱い、上級で分散・標準偏差・相関係数、さらに「特性の推測」へ進む構成になっています。
順番の作り方そのものを、そのまま真似できます。
もうひとつが、同じく総務省統計局の統計ダッシュボードです。
登録不要で、人口や消費の公的統計をその場でグラフにできます。
私は担当エリアの人口構成を見て、主力商品の想定客層が10年でどれだけ減るかを試算しました。
自分の仕事と地続きの数字を触ると、統計が急に他人事でなくなります。
ここまでの流れを整理しておきます。
| ステップ | やること | 期間の目安 | 使うもの |
|---|---|---|---|
| 1 | 全体像の地図を作る | 数時間から1週間 | マンガ形式などの入門書1冊 |
| 2 | 自社データで代表値とばらつきを読む | 1か月から3か月 | Excel・スプレッドシート |
| 3 | 比較の条件をそろえて効果を語る | 実務のたび | 比較設計のメモ1枚 |
| 4 | 公的サイトで手を動かす | 随時 | なるほど統計学園、統計ダッシュボード |
Pythonが出てこないことに驚いた方がいるかもしれません。
私も販促企画のチームリーダーになった今まで、業務でPythonを書いたことは一度もありません。
数千件までのデータなら、スプレッドシートで足ります。
統計検定は、目標ではなく現在地の確認に使う
資格の話にも触れておきます。
日本統計学会公式認定の統計検定は、級ごとの範囲が学習の段差をきれいに可視化してくれます。
4級はデータと表やグラフ、代表値、散らばり、クロス集計表、確率の基礎まで。
統計検定3級になると、ここに相関と回帰、確率分布、そして「統計的な推測」が加わります。
受験料は3級で6,000円、学生割引で4,000円です。
つまり4級と3級の間に、記述統計から推測統計へという、あの段差がそのまま入っています。
自分が今どちらにいるか分からなくなったときに、範囲表を見るだけでも現在地が分かります。
私自身は受験していません。
それでも仕事は回りましたし、必要になったら受ければいい程度に考えています。
最初のゴールに設定してしまうと、試験範囲を追いかけるだけで自社の数字を一度も見ないまま数か月が過ぎるので、そこだけは気をつけてください。
まとめ
長くなったので、要点だけ残します。
- 道具から入ると、道具を覚えることが目的になって止まる
- 順番は国の制度がすでに示している。記述統計が先で、推測統計が後
- モデルカリキュラムも「読む→説明する→扱う」の順で、道具は最後
- 1冊目は理解ではなく地図づくり。薄くて全体が見える本を選ぶ
- 練習台は自社のデータ。業務知識がある分、理解が速い
- 比べ方をそろえられるようになるだけで、会議での立場が変わる
3年前の私は、順番が分からないことを自分の能力の問題だと思っていました。
そうではなく、単に地図を持たずに歩き出していただけでした。
今日できるのは、1冊目を選ぶことと、自社の売上データを1年分もらってくることの2つです。
そこから先は、思っているよりずっと短い距離です。
最終更新日 2026年8月23日 by getfat






