なぜ指示できる人のチームは成果が出る?リーダーの言葉の力とは
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「うちのチーム、なんでこんなに動きが遅いんだろう」
そう感じているリーダーやマネージャーの方は、少なくないのではないでしょうか。同じ人数、同じ環境なのに、あるチームは軽やかに成果を出し、別のチームはいつも指示の行き違いやモチベーション低下に悩んでいる——この差は、メンバーの能力よりも「リーダーの言葉」にあることがほとんどです。
はじめまして。私は組織コンサルタントの田中明子と申します。大手メーカーの人事部門で12年間、マネジメント研修や組織開発を担当し、独立後は中小企業から上場企業まで、リーダーシップ開発・チームビルディングを専門に支援してきました。数百人のリーダーを見てきた経験から、はっきりと言えることがあります。「チームの成果は、リーダーの指示の質で決まる」のです。
この記事では、指示できるリーダーのチームがなぜ成果を出せるのか、そしてリーダーの言葉がチームにどんな影響を与えるのかを、具体的な事例や実践法とともに解説します。「部下が思うように動いてくれない」とお悩みのリーダーの方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。
目次
指示できるリーダーとできないリーダー、チームに何が起きているのか
「伝わったつもり」が招くチームの機能不全
リーダーの多くは、「自分はちゃんと伝えている」と思っています。しかし現場では、同じ指示でもまったく違う受け取られ方をしていることが多い。
たとえば、こんな場面を想像してみてください。
「例の件、よろしくね」
リーダーはAという仕事のことを指しているつもりです。でもメンバーはBのことかと思い、Cの可能性もあると悩みながらとりあえず自分の解釈で動く。締め切り当日になって「そうじゃないんだよ」という事態が起きる——これは決して珍しいことではありません。
ある調査では、企業内で行われるプロジェクト投資のうち約7.5%もの投資分がコミュニケーションミスによって無駄になっているという結果が報告されています。コミュニケーションミスは単なるロスではなく、チーム全体の時間と信頼を蝕む深刻な問題なのです。
成果が出るチームには「指示の上手なリーダー」がいる
一方、成果を出し続けているチームを観察すると、そこには必ずといっていいほど「指示の上手なリーダー」の存在があります。
このようなリーダーの特徴は、単に情報を「渡す」だけでなく、メンバーが「動きたくなる」言葉を選べること。命令ではなく、相手が主体的に動ける状態をつくる言葉を使っているのです。
チームを率いるうえでリーダーに求められているのは、「自分が優秀に仕事をこなすこと」ではなく、「チームとして成果を上げること」です。そのためには、一人ひとりのメンバーが動きやすい環境をつくる言葉の力が不可欠です。
リーダーの言葉がチームの空気をつくる
心理的安全性と「指示の質」の深い関係
近年、「心理的安全性」という概念が多くの職場で注目されています。ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が1999年に提唱したこの概念は、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」を指します。
そして、この心理的安全性を高めるうえで最も重要な役割を担っているのが、リーダーの「言葉」です。
リーダーが「こんなことも分からないの?」「前に言ったよね?」と言い続けるチームでは、メンバーは質問することを恐れます。分からなくても「わかりました」と返事をして、後から問題が起きる。これが積み重なると、チームは徐々に機能しなくなっていきます。
逆に、「何かわからないことがあった?」「どこまで進んでいますか?」という言葉をかけられるチームでは、メンバーは安心して動けます。疑問を早い段階で解消できるため、ミスが減り、業務効率も上がるのです。
Googleの研究が証明した「言葉の力」
2016年、Googleは「プロジェクト・アリストテレス」という大規模な社内調査の結果を発表しました。成功し続けるチームに共通する条件を約4年かけて調査した結果、最も重要な要素として浮かび上がったのが「心理的安全性」でした。
この研究によれば、心理的安全性の高いチームのメンバーは離職率が低く、多様なアイデアをうまく活用でき、収益性が高く、マネジャーから「効果的に働いている」と評価される機会が2倍も多かったと報告されています。
リーダーの言葉が心理的安全性をつくり、心理的安全性がチームの成果を左右する。この連鎖を理解することが、成果を出すチームをつくる第一歩です。
指示できる人の言葉の特徴——何が違うのか
「なぜやるか」を伝える言葉の力
指示の上手なリーダーが必ず意識していること、それは「なぜこの仕事をお願いするのか」を伝えることです。
「この資料、明日の朝までに仕上げておいて」という指示と、「明日の会議でクライアントに提案するための資料なんだけど、あなたの分析力が一番この案件に向いていると思うから、お願いできますか?」という指示では、メンバーのモチベーションがまったく異なります。
後者の言葉には3つの要素が含まれています。
- 目的(なぜ必要か)が明確
- 相手への信頼・期待が伝わっている
- 締め切りの背景が共有されている
「なぜこの仕事を任せるのか」を個別に伝えることで、メンバーは「自分がこのチームに貢献できる」という手応えを感じながら仕事に取り組めます。これは単なる動機付けではなく、長期的なエンゲージメント向上にも直結します。
相手を主語にした言葉が人を動かす
コミュニケーション研究の世界では長年、言葉の「主語」が相手の行動に大きく影響することが指摘されています。
たとえば、同じ内容でも言い方ひとつでこれだけ違います。
| 指示できない人の言葉 | 指示できる人の言葉 |
|---|---|
| 「まだできないの?」 | 「もうできたの?(すごいですね)」 |
| 「なぜやらないの?」 | 「何があったの?」 |
| 「ちゃんと見てよ」 | 「ちゃんと見てるよ」 |
| 「全部できたら見せて」 | 「半分できたら見せて」 |
| 「明日なのにまだですか?」 | 「明日の準備はどうですか?」 |
| 「これでは間に合わないだろう」 | 「これでも間に合うとしたら?」 |
上の表の右側に共通しているのは、「相手の状況を気にかけ、前進を後押しする言葉」です。責める言葉は人を萎縮させ、次の報告を遅らせます。一方、受け止める言葉は人を開かせ、早期の情報共有を促します。
「できない」を責めず「次の一歩」を示す
指示のうまいリーダーは、メンバーが失敗したときの言葉も違います。「なぜ失敗したんだ」ではなく「次はどうすればうまくいきそう?」と問いかける。「失敗したら」ではなく「失敗しても」という前置きで話す。
この差は小さいようで、チームの挑戦意欲に大きな差を生みます。失敗を罰する雰囲気のチームでは、メンバーは無難な選択しかしなくなります。一方、失敗を次への学びとして扱う言葉を使うリーダーのチームでは、メンバーが積極的に新しいことへ挑戦するようになるのです。
今日から使える!チームが動く指示の出し方
具体的に伝える——曖昧な言葉を排除する
成果につながる指示の基本は「具体性」です。「よろしく」「うまくやって」「適当に」といった曖昧な言葉は、メンバーを困惑させるだけで何も生み出しません。
具体的な指示には、以下の要素を含めることを習慣にしましょう。
- 誰が(担当者を明確に)
- 何を(タスクの内容・範囲)
- いつまでに(具体的な期限)
- なぜ(目的・背景)
- どの水準で(品質の期待値)
なかでも「どの範囲までやってほしいのか」を明確にすることは特に重要です。業務の境界線が曖昧なままだと、メンバーはどこまで判断していいのかわからず、常にリーダーへのお伺い待ちになってしまいます。
また、「このくらい言わなくてもわかるだろう」という思い込みも禁物です。自分にとって自明なことでも、相手には伝わっていないことは多い。「言わなくても分かる」は、過去に何度も失敗を繰り返したリーダーの呪縛です。丁寧な説明は、最初は時間がかかるように見えて、長い目で見れば大幅な手戻りと時間のロスを防いでくれます。
進捗確認の言葉を変える
指示を出した後の進捗確認も、言葉ひとつでチームの空気が変わります。よくある「どうなってる?」「いつできる?」という確認は、プレッシャーを与えるだけで有益な情報を引き出せません。
試してほしいのは、以下のような問いかけです。
- 「どこまで進んでいますか?」(現状の把握)
- 「何か困っていることはありますか?」(障害の発見)
- 「難しくないですか?」(サポート意志の表明)
- 「念のため確認ですが——」(確認を責めではなく配慮として伝える)
これらの言葉は、メンバーが「相談していい」と感じる雰囲気をつくります。早期に問題を表面化させることができれば、取り返しのつかない事態になる前に対処できます。
リーダーの言葉を磨くために
「指示できる人」と「できない人」の差は、才能ではありません。言葉の習慣の差です。
つまり、意識して変えれば、誰でも「指示できるリーダー」になれるのです。
まず意識してほしいのは、日頃の一言一言を「相手が動きたくなるか?」という視点で見直すことです。指示を出す前に「自分が言おうとしていることは、相手を委縮させるか、前進させるか?」と自問する習慣をつけるだけで、言葉は変わっていきます。
また、言葉の引き出しを増やすことも効果的です。その点で参考になるのが、コミュニケーションのプロ・鶴野充茂氏による上手に「指示できる人」と「できない人」の習慣(明日香出版社)です。2026年2月に発売されたこの最新刊では、部下への業務依頼から同僚への協力要請、上司への提案まで、あらゆる「指示」の場面で使える具体的な言い回しが豊富に紹介されています。累計95万部突破のコミュニケーション書著者による実践的な一冊で、日々の言葉の習慣を根本から見直すヒントが得られます。
指示の出し方を変えることは、チームの文化を変えることでもあります。リーダーが安心して問いかけられる言葉を使い続けることで、チームに心理的安全性が生まれ、メンバーは自分の力を最大限に発揮するようになります。
言葉は、最もコストのかからないマネジメントツールです。今日から一つだけ、言い方を変えてみてください。そのたった一言が、チームを動かす第一歩になります。
まとめ
この記事では、指示できるリーダーのチームがなぜ成果を出せるのかについて解説してきました。重要なポイントを振り返ります。
- 指示の曖昧さはチームの機能不全を招く。コミュニケーションミスはコストとなり、チームの信頼を蝕む
- Googleの「プロジェクト・アリストテレス」が示したように、チームの成果を左右するのは心理的安全性であり、それをつくるのはリーダーの言葉
- 指示できる人は「なぜやるか」を伝え、相手を主語にした言葉を使い、「次の一歩」を示す
- 具体的な指示の5要素(誰が・何を・いつまでに・なぜ・どの水準で)を意識するだけで、チームの動き方は変わる
- 進捗確認の言葉を「責める」から「支援する」へ変えることで、問題の早期発見が可能になる
リーダーの言葉は、チームの空気をつくり、メンバーの行動を左右し、最終的には成果に直結します。才能や経験よりも、日々の言葉の習慣こそが、チームを成果に導く最大のカギです。
ぜひ今日から、一つだけ言い方を変えることから始めてみてください。それだけで、チームの風景は少しずつ変わっていくはずです。
最終更新日 2026年3月2日 by getfat






